3月7日の日記

2008年3月7日
【製品とは】
    _、,_
 ? (⊂_  ミ ドイツ人が発明
 ↓
 ? ( ´_⊃`) アメリカ人が製品化
 ↓
 ? ミ ´_>`) イギリス人が投資
 ↓
 ? ξ ・_>・) フランス人がデザイン
 ↓
 ? ( ´U_,`) イタリア人が宣伝
 ↓
 ? ( ´∀`) 日本人が小型化に成功
 ↓
 ? (  `ハ´) 中国人が海賊版を作り
 ↓   _,,_
 ? <ヽ`д´> 韓国人が起源を主張する
昨日「おおきく振りかぶって」の第8巻を買ったんだ!
おおきく振りかぶってっていうのは高校野球マンガでめっちゃ面白くって略して「おおふり」とか呼ばれているんだけど、何が面白いってやっぱ試合だよね?

夏の予選の緒戦なんて前大会優勝校と雨の中やるんだぜ?
しかも埼玉予選!!!

埼玉予選って神奈川予選の次くらいに怖いんだぜ?
マジでシードなんてあってないようなもんでさー
今でこそさいたま市とか表面上ひとつになっちゃってるけど、浦和と大宮と与野ってまるで他県のように仲悪いんだぜ?

高校で野球部に入ろーって奴はもうなんかとてつもなく迷うわけ。どこの高校にしようかって。
春日部共栄とか行ってもレギュラーとれそうな実力あるやつがマジに悩みに悩んで塾で進路相談の面接でも一時間以上もああでもないこーでもないって(相手俺←当時塾講師)、そんで結局結論出なくて最後は家から近いからって聖望学園高にしたら1年目で甲子園に出場してすげー!!クルクルミラクルッ!!ってことが毎年茶飯時におこっちゃうわけさーっっ。すげーよな?

そんなんだから埼玉予選マニアっていうくらいな奴も出てきて(←俺!)、そういう奴から見ると「おおふり」は実在している学校とチームがモデルやからめっさおもろいやんか!
埼玉県民だったらマジ薦めるね!さいたまさいたまーっキョンキョンーっ

http://www.oofuri.com/

アニメがぁー
http://douga119-anime.seesaa.net/article/38966854.html

クルクルミルクル
http://www.youtube.com/watch?v=zlddEwmMhBw
サッカー見てきたよ?!
FC東京っていうチームの横浜戦!はるばる市営地下鉄で横浜まで行ってきた!

FC東京っていうのはカリブと日本の混成チームでワンチョペとかルーカスとかリチェーリとかモニーワとかヒマラヤッソーとか、とにかくディフェンスラインが高く保っててサイドに開きながらとんでもなく長い距離をとんでもない迫力とスピードでドリブルしていく選手が続出するまとまりのないチームなんだ!一言で言えばっっ!
もちろんTVで見ててもFC東京っておもしろいけど、実際に見てみるとこんなに面白いチームってJリーグにあるの?他にあるの?
だってワンチョペって変な名前だけど、なんかやる気ないじゃん?!!
FCのCはコスタリカだとしてFは何?ふるりれろ?やっぱね!
と話題はつきない。

いいかい?
サッカーに興味のない君とかのためにこのチームを「どこでもいっしょ」っていう人間になりたい井上トロが活躍するゲームにたとえてあげようかっ!
じゃあたとえば井上トロ氏を見て君が「もはやあんさんは猫ではない!!断じてっっ」って叫んだとしよう。だって常に二本足で日本語しゃべってるもんね?
そうしたらこれをFC東京では、
「もはやこれはサッカーではない!絶対にっっ!変だもん!!」って福西(2005-2006シーズンが終わると、静岡の名門ビッグクラブ:ジュビロ磐田が意外にも放出した中心選手=MF)が叫ぶんだけど、なんせカリブ人(カリバー)には何を言ってるのかさっぱりわかんないんだわ。
だからワンチョペは常に
早く日本人になりたいにゃあ
って思っているんだな!!

http://www.nikkansports.com/soccer/p-sc-tp0-20070117-143438.html

ふくちゃん
http://www.youtube.com/watch?v=cU-Uaq_GduQ

どこしょ
http://www.dokodemoissyo.com/
PSP持ってる人居るかい?
今PSPがめっちゃほしいんだ。
PSPってのは株式会社ソニーエンターテイメントが開発したプレイステーションポータブルっていう固いゲーム機で、PSPで遊ぶ人はプレイステーションポータブルプレイヤーって言い、PSPPで表される。PP=1とすると、PSは1+√5を2で割った値に等しく、PPとPSの比が1:1.618くらいになるのだ。これは黄金比と呼ばれるくらい美しいのだ!(Extreme and mean ratioとも言う。)どのくらい美しいかというとファイナルファンタジータクティックス(FFT)という柔らかいゲームの戦闘シーンに突入する画面にこの黄金比(Golden ratio)が現れる。簡単にいうとあれだ、巻貝の渦巻きね、あれが黄金比そのものでできているんだ。凄いだろう?
ちなみに株式会社S&Bに言わせると黄金比は5:8であり、自信を持って5/8チップスを売り出してみたものの、八百万(ヤオヨロズ)の神様の誰かの怒りを買い、生産中止になったということだ(この辺は適当だ)。
ちなみにジョジョの奇妙な冒険第7部の、今まさにスティールボールランレース中(!)のジャイロ=ツェッペリによれば、黄金比は16:9と主張してやまない。サッカーでもアメフトでも安心して見れる比率だね。(要はワイドテレビって言いたい)

話はそれましたが、つまりFFTリメイク版をPSPでやりたいから買いたいと思ってるって話ってこった。

fft
http://www.youtube.com/watch?v=BNm1eZeXEbw

ジャイロ=ツェッペリ、今現在21位
http://www.ne.jp/asahi/asame/shinbun/sbrkekka.html
あ、ごめん。これ↑古かった!今6位くらいまであがった。

16:9のステージでfcdのライブ
http://www.youtube.com/watch?v=FjeMDvCdrtc
今年のF1おもしろいよ!
なにが面白いかって、今さ、この瞬間にさ、3人ならんでるんだって。首位に
アロンソ君 22ポイント
ライコネン 22ポイント
ハミルトン 22ポイント

でさあ、最速マシーーンで最速ラップで飛ばすマッサって奴がまだ4位なんだよ!17ポイント!すごいだろ?
ここで巻き返すだろ?大抵のマンガだと。でさあアロンソ君が「そうはいくかよ」って頑張っちゃうだろ?大抵のマンガだと。ゴール下は譲らないとかなんとか盛り上がるだろ?ふつう。だから今週末とかマジおもしれーって。ヨーロッパラウンドだ!バルセロナ!太陽の町!デコ!

ちなみに顔のランキングはこんな感じね?
アロンソ 22ポイント
ライコン 22ポイント
ハミルン 22ポイント
マッサ! −2ポイント

じゃあ調子に乗ってアーティストにたとえてみるよ?
アロンソ・ライコネン・ハミルトンなど
http://www.youtube.com/watch?v=MK15w0INhVA
マッサ
http://www.youtube.com/watch?v=oIaz6zBz1go

とりあえずマッサ大好きです勝ってください是非に!

羊をめぐる暴言

2007年5月8日
小さい頃に読んだ本って特別だよな?
いつまでも心の奥底で眠っててさ、ふとした瞬間に顔を出すのナ?
河本先生ってさ、わざわざ教室を暗くして『2分間の冒険』を読んだんだけど、小学校のとき。
ながーーーい本だったから何日もかけてちょっとずつ進んでったから強烈な印象があってめっっちゃおもしろかってん

たぶん今懐かしく思い出したから速攻アマゾンで注文してわくちくどきわくしながら明日配達されるの待ってんだけど、とりあえずこういうの待つのってのも楽しいめぇー

でもさ、大人になって初めて読んだとしたらきっとたいしたことねーんだ、きっと。
だから友達とかに紹介しないわけ。いないけど

でもさ、子ども(7〜11才)には薦めたい!ぜひに!
朝7;52〜57分くらいに家の前を小学生が集団で待ち合わせして通っていくんだけど、そいつらに毎朝ちょっとずつ読んで聞かせてあげるってのはどう??
速攻つかまるよな?!ハアハア

そういえば読んでくれたの河本先生じゃないかも。谷津先生かも。
でも修学旅行のときおっぱい見たのは河本先生

2番の歌詞が怖いよね、関係ないけど
http://www.youtube.com/watch?v=H6ptPcrcjzc
オーストラリアのヴェロニカズって知ってるかい?
メアリーとメナシーっていう双子の女の子が4everって曲を爽快に歌うんだ。
4everのPVを絵だけ流して、音はコステロのジアザーサイドオブサマーにすると最っ高に爽快になるんだぜ?
今度鉄火丼買って食べながら醤油こぼしながら試してみてごらんよ!
ついこの前なんかウィルタ (UILTA, Orok) 民族の末裔っていう人に初めて出会って感激していろいろお話を聞いて食べて飲んで(鉄火丼・ビール)、そのうちなんか小さい頃に住んでた町の話になって、そしたらなんと彼が隣に住んでたやっちゃん(安田豊彦)だって分かってめっちゃ驚いて対象店じゃないマックでふるりれろ〜〜〜〜〜!
そのくらい驚いたときに頭の中を流れていた曲がベロニカズの4everだったんだ。まるで作り話みたいだけど本当に作り話なんだ。

でも








って下から読んでみ?

4ever
http://www.youtube.com/watch?v=zEHKDpyY0TM

the other side of summer
http://www.youtube.com/watch?v=t4IJx49NH_w

hururirero~
http://imihu.blog30.fc2.com/blog-entry-2760.html

あまちがえた
http://imihu.blog30.fc2.com/blog-entry-2754.html

ちょっと上達した

2006年10月3日
64 名前: 吹奏楽板紹介3(おわり) 投稿日: 02/04/12 18:18 ID:8JDSWep3

吹奏楽人はエロに興味がないらしく、エロネタはことごとくバッシングされています
(ちなみにエロとは言い切れないと言うか女子にとってはかなり切実なはずの
「長時間の練習に耐える生理用品は?」スレ
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=suisou&;key=995206715
までバッシングされている+一部の暴走により削除依頼まで出された辺りを見て
もらえば吹奏楽板の厨房率(と言うか異常なまでの潔癖性というべきなのか)の
高さはわかってもらえるかと思います)。そんな中異色の
「★☆★ フルートでオナニーしたことある? ★☆★」スレ
http://yasai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=suisou&;key=991371827
が健闘中。エロネタマンセー(藁)な俺としては嬉しい限りです。しかし、あの
異常な位の潔癖性(エロ嫌いな厨房)はどうにかならないものかな・・・。

---
そのままコピペしたのでリンクは切れていると思われます。
窓の外がすごく晴れててさ、来週からもう夏休みでね、中学2年の。
中学2年って覚えてる?
僕の隣にはいつも太田さんが居たように思う。隣の席にね。
君は中学2年のときに、なんというかすごく仲の良い友達とか居たかな?

別に中学2年のときじゃなくてもいいんだ。
僕にとって中学2年ってだけで、もちろん君にとっては、たとえば中学1年だったかもしれないし、中学3年かもしれないし、高校生のときかもしれないし、あるいは今現在かもしれないし、あるいは今からさらに5年後かもしれないし、あるいは・・・まあとにかくさ、本当に仲の良い友達って居たかなって思ったんだ。

もし居たのなら、僕がこれから書くことってちょっとずつあるいはちょっとだけうまく伝わるような気がするんだよね。

なぜなら、僕にとっての中学2年ってのは、たとえば、仲の良い友達が純粋に仲の良い友達だって言えて、仲の悪い友達が純粋に素直に仲の悪い友達って言えたからなんだ。
仲の悪い友達っていう表現がいまひとつ良くないようだけど(だってさ、仲が悪いって時点で友達なのかどうなのかって本質的に疑問が残るよね?)、とにかく中学2年の僕にとっては仲の悪い友達は仲の悪い友達っていうのが一番しっくりくるんだ。

太田さんは仲の良い友達だったのか仲の悪い友達だったのかよくわからない。
でも席替えのたびに太田さんの隣に座ろうとしてたように思ってて、なぜかうまくいつも太田さんの隣に座ってたんだ。
別に好きとか恋をしてるとか愛し合ってるとか全然なかったのに(そのときは他にいたんだ、気に入ってる人が)、本当に不思議なんだけど、とにかく中学2年の僕のとなりの席には常に太田さんだったし、太田さんの隣に座りたいと席替えのたびに思ってたんだよね。
その辺のところがあるいは君にちょっとだけうまく伝わるとうれしいなと思った。

でも実際には太田さんが友達って呼べるかどうかさえはっきりしないんだ。
中学2年の僕じゃなかったらあるいはもっとうまくやれてたかもしれないし、あるいはそうじゃないかもしれない、友達なのか友達でもないかもしれないなのか良くわからないけど、そんな風になんかあいまいで・・・ってのが一番いいのかもしれない。
つまりね、もし僕が中学1年生で隣の席がたまたま太田さんだったら僕はあるいは好きになってて告白したりふられたり落ち込んだり、そういった君にはっきり伝えられる話があるのかもしれない。
あるいは僕が中学3年のときに太田さんと同じクラスになったりしてたのなら、隣の席に固執するなんてまるでなかったのかもしれない。
つまりそういうことなんだ。
中学2年のときに太田さんと1回隣の席になって、そのあと「席替えとかしませんか」とクラスの中でそういう雰囲気になって、そういうふうに実際席替えになったとき、太田さんの隣の席に固執したのはなぜかという疑問に、はっきりとは答えを表現できないし、それから仲の良い友達なのか仲の悪い友達なのかもはっきりしないし、さらに友達と呼べるのかどうかもはっきりしなかったんだよね。まったく。

唯一はっきりしているのは、
夏休み中に太田さんは転校していって僕の席の隣は誰も居なくなったんだけど、それで一人でのびのびとしていたんだけど、ある秋の日の午後に、窓から日差しが入ってきて、授業は数学か何かで、そのときに太田さんが居なかったので僕は話したい話ができなかったんだ。僕が飼ってた犬の話をね。

ここに今、太田さんが居てくれたら、隣に居てくれたら僕は本当の犬の話ができたのに、って思ったんだ。
それが唯一僕が太田さんについてはっきり言えること。
話したいときに君は居ないってことだ。


4.従兄弟の話

本当の自由ってなんだろうね。

たとえばさ、数学の時間に右手でペンをくるくる回しながらさ、左手でそっと少しずつ窓を開けてくんだよね。
もう夏が近くて、いやもう思いっきり夏なんだけど、だからちょっと蒸した空気の中をさらりとささやかな風が流れれば、それはもう気分を一新させるのに十分なんだ。
この感じをなんと呼べばいいかわからないけど、自由について考えるとき、いつもこのイメージが浮かぶんだよね。つまり考え方の方向性は間違っていないんだよ、きっと。
感じとしては。フィーリングとしては。
なんと呼んで良いかわからないけど、その「わからない」は自由についてどう表現していいかわからないときの「わからない」にとても似ていると思うんだ、僕の中では。

ところが従兄弟においては、彼はその、自由というものをこうはっきり僕に示したんだ。

「夏休みなんだけどちょっと自由にさ、遊びに行かない?」って。

彼が何を言ってるのか全くわからなくて途方にくれたのだが(本当に途方にくれてしばらく立ち尽くしたんだ)、それにはこういう訳がある。

ちょっと長いんだけどね。
それは音楽の授業から始まる。

音楽の授業は音楽室に移動なんだ。
移動したら好きな席に座るんだ。

校舎の東側の一番隅にあって、うちの教室からはけっこう遠いんだよね。
でも最上階(6階)にあって、窓からの眺めは結構いいんだ。
しかも教室が扇状になっていて、スタジアムのように段差がついているんだ。
一番後ろの席からは、教室全体を見下ろせるような形になっているしね。
たぶんちゃんほはかっこいい
依田がんばれー涙
とにかく僕にとって、うどんのおいしさを理解する為に毎日毎食かかさずおかゆを食べなければならなかったのだし、叔母さんにわがままを言わなければならなかったんだ。

できれば叔母さんにはわがままを言いたくなかったんだよ。ほんとはね。
それがどんな小さなわがままだったとしてもね。
叔母さんはとってもよくしてくれたからね。
例えば毎日おかゆを作ってくれたことや、看病してくれたことや、知らない人についてっちゃだめよとしつこいくらいに注意してくれたことだって、あるいはなんか忘れてしまったけど些細なことで怒られたときでも、とにかく叔母さんは僕のためによかれと思ってやってくれているんだよ、それはもうとてつもなく確かなことなんだ。

それはね、たとえばここから遠く離れた太陽の国エジプトのあのスフィンクスがこれから先もどんどん崩れていって、それをもう誰も止められないってことくらいに確かなことなんだよね。
ほんの少ぉしずつだけど、どんどんどんどん崩れていくんだ。
もうスフィンクスには何も守るべきものがないんだよ。
かつてのピラミッドには既に王の遺体はなくなっているし、きっとその所為なんだよね。
王の遺体はいつか誰かが持ち去ってしまったんだ。そこに侵入した誰かがね。
彼らは闇の中を明るく照らして、ピラミッドの呪いを打ち消したかもしれないし、また彼らは王の棺をこじ開けても何も罰を受けなかったのかもしれない。
でも、おかげでスフィンクスは崩れていくんだ。少しずつね。

うまく言えないけど、叔母さんはとても現実的な人なんだ。
それが悪いわけじゃないし、それでいいんだと思う。
ただ、僕はわがまま言うどころか、本当は話すこともちゃんとできないでいるんだ。
つまり、スフィンクスの話なんてとてもできないってことさ。

僕にとってのスフィンクスは闇の奥の恐怖とか、悪いことをしたら罰を与える呪いとか、そんなものに直結してるんだ。
だからもし僕が今寝てるベッドの横にスフィンクスがじっと横たわっていたら、僕は何も言わずおかゆを食べ続けていたはずだよ。ずっとね。
夜はあいかわらず怖いはずだし、早くトイレに行かなかったことを必死に後悔するだろうし、近所のバイパスの道路の下のトンネルには近づかないようにしただろうし、暗闇の中では必死に耳をそばだてたさ。

僕はそういう風にもっといろいろなものに怯えていたのだろうが、それは誓って言うけど悪いことじゃないんだ。
だってね、暗闇の中でこそ五感は研ぎ澄まされていくんだ。
そして、もっと注意すべきことを注意できるはずなんだよね。

そういえば、寝込んでる何日かの間、従兄弟が1回だけ僕の寝室に来たんだ。こっそりと。
従兄弟が僕に近づくことは禁止されてたからね。風邪がうつるといけないからって叔母さんにいわれているんだよ、きっと。

叔母さんは、前に従兄弟がインフルエンザで寝込んでいたときも僕に決して従兄弟と会わせなかったんだ。
同じ空気を吸わなければ病気はうつらないよって言ったんだ、そのとき。

そういう面ではとても現実的なんだよ、叔母さんは。

従兄弟が僕の部屋にこっそりきて、それから何かしていったことは覚えてるんだけど、何をしてどういうことを話したのか覚えてないんだよね。まだ熱にうなされてる頃だったし、意識は朦朧、咳はごぼごぼ、汗はだくだくって感じだったんだ。

それから、叔母さんにうどんをねだった頃にはちゃんと元気になりつつあったんだけど、実はね、あの会話は嘘なんだ。
「おばさん、悪いんだけどね、おかゆって飽きちゃったんだ。だから普通のご飯じゃあ駄目かなあ。ほんとはね、普通のご飯も硬めに炊いたほうが好きなんだよね。今まで言わなかったけど。」
って書いたけど、本当は全然違ったんだ。

全然言えなかったんだ、そんな風には。

君なら分かるだろう?僕がこんな風に話せないことなんてさ。
そりゃこんな風にうまく言えたらどんなにいいだろうって思うさ、僕だって。
そりゃいつもそう思うんだ。
どんなに素敵だろうと思うんだ。

でも僕はそのとき夕飯のおかゆを前に何も言えなかったんだ。
一口も食べれなかったし、何もしゃべれなかったし、指一本動かせなかったんだよ。
おかゆの前でどうしたらいいか分からなかったし、誰も教えてくれなかったんだ。

教えてくれたのは叔母さんだった。

叔母さんは、どうしたの?って僕に聞いた。
それから、食べたくないの?とか、気持ち悪いの?とか僕に聞いたんだ。
後にする?とか
横になる?とか
背中さすろうか?とか
水飲もっか、とか
そのたびに僕は首をふって、それから次も首をふって、次も首をふって、
そしたら叔母さんは、おかゆは嫌なの?って聞いた。

おかゆは嫌なの?って聞かれて、僕はうんって言ったんだ。

それですぐに叔母さんは階下に下りていってうどんを茹でたんだ。うどんを茹でて僕に持ってきたんだよ。

僕は本当の本当はこういう風にわがままを言ったし、だけど、君には分かってほしいんだけど、こういう風にわがままを言いたくなかったんだ、ほんとに。
いつもね、何も言わないほうがよっぽどいいって思ってるんだよ。後で思うんだ。

それともね、僕の部屋のどこかにスフィンクスが居て、こうじっと僕を見据えていたとしたら、僕は黙って、ちゃんと毎日でもおかゆを食べれたんだと思う。きっとね。

叔母さんにわがままも言わないし、ちゃんと病人の優等生だし、誰も傷つかないで済むんだ。

ところで椎名誠の本に「さらば国分寺書店のオババ」っていう本があるけど、あのオババって主人公には一言も言葉を発してないんだ。意外だよね。

あのね、よく聞いてね。
僕はね、あの日ハービーと一緒に公園に行った話を今まで誰にも話したことはなかったんだ。公園で何をしたかもね。そうすることで誰も傷つかないで済むと思ってたからなんだ。

順番に話すとね、
あのね
朝4時か、その辺りに起こされたんだ。叔母さんに。

おかゆが嫌だって言った次の日の朝の4時ごろのことなんだ。
まだ暗かった。
僕はベッドに寝てて、部屋のカーテンはぴったり締め切っていた。それでも分かるんだ。外がまだ暗いってね。

時計も見なかったけどまだ4時か4時半くらいだってこともちゃんと分かった。
僕はそういうことが得意なんだよ。時計を見ないで時間を当てちゃうってことがね。

叔母さんは起こして悪いんだけどちょっと一緒に来てほしいの、って言った。それから僕の着替えを手伝ってくれて、僕のコートを左腕にかかえて、ドアをあけて、さあ行きましょうって言った。

僕と叔母さんは手袋なんかをはめながら階下に降りて、リビングの電気を消して靴を履いて外に出た。
つまりね、「自分とは何か」ってテーマでいきなり禅のよーな話をし始めたら、ボス猿のカツラ剥きになるよな、って思ったんだ。仙道抜きのね。

でもさ、もし今ここに教授が居て、爺さんのテントでナイフを好きなだけ触らせてもらった僕とハーベストの「話の続き」を読んだら、きっと「要らない」って言うと思うんだ。

要らないって言ったわけじゃないよ?実際は。
さっき「教授が要らないって言った」って書いちゃったけどね。
実際に僕に向かってどうこう言ったわけじゃないんだ。
ただね、僕が思うに、たぶん続きは要らないって言うと思うんだよね。教授は。

だけど残念ながら僕とハーベストの話には続きがあるんだ。

たとえばね、ジョンアービングが『熊を放つ』って本書いてるんだけど、あれ最後の部分はきっと要らないんだ。ノートの内容の部分ね、うまく文章に入りきらなかったんだよきっと。
でもね、それでも書いてるんだ、彼は。

誰か有名な人が「ハックルベリーフィンの冒険は後半部分いらない」って言ったって聞いたけど、
あれは正確には、「どこそこより後は読むべきじゃない」って言ったんだよね。たしか。

つまりね、熊を放つにしろハックルベリーフィンの冒険にしろ書いちゃったものは書いちゃったんだよ。
それで書いちゃったものってのは、もともと初めから書くべきものだったんだよね、きっと。
それでそれを読んだ人から「後半はいらない」って言われるべきものなんだよきっと。

ここから後は読むなとかいらないとかなんとかかんとかそういうことを言われるべきものなんだと思うんだ。
いらないっていうことはさ、イコール書くべきじゃなかったってことにはならないと思うんだよね、きっと。

ところでポールセローの短編って、要らない部分は初めから書いてないんだよね。

3.話の続き

結局いつまでたっても雨はやまないんだ。
仕方ないから僕とハービーは公園から家まで走って帰ることにした。

コートを着てこなかったことを後悔すべきかどうかは微妙は問題なんだ。
コートが無い所為であまりにも寒いし冷たいし辛いし凍えそうなんだけど、でももしコートを着てたら雨でどんどん重くなって走りにくいんだ。たぶん。
僕の持ってるコートってもともと結構重いんだよね。
それなりに気に入ってるんだけどね。

とにかくお爺さんにはさようならって言ってテントを出た。

お爺さんは僕にサツマイモを持たせようとしたけど、それは断ったんだ。
もって帰るわけにもいかないしさ。見つかったら怒られるだろうし。
たいてい小さい頃の価値基準って怒られるか怒られないかってところなんじゃないかな。
誰だって怒られないほうがいいからね。怒られるよりはさ。

でも従兄弟は違うんだ。怒られようがそうじゃなかろうが知ったこっちゃ無いって風なんだよね。
そういうところで僕と従兄弟は違うんだよ。根本的に。

さらに従兄弟はフランス語で会話ができるんだ。
僕はいまだに犬としか会話できない。まともにはね。

ところで、公園から家まで実に7回も角を曲がらなくちゃならないんだ。
5回目の角を曲がったときには靴の中までびしゃびしゃに濡れてしまった。
ハービーは別に平気だったと思うんだが。

実はね、このあたりからあとはよく覚えてないんだ。
5回目の角をまがったあたりからね。

その角をまっすぐ行くと神社があって神社の階段があって坂があって右手に駄菓子屋があるんだけど、その駄菓子屋さんの軒先で雨宿りしている間に僕は倒れたらしいんだ。
あまりの寒さにうずくまって、ハーベストを両手で抱えるように寄りかかったまま意識を失ってたのを駄菓子屋のおばちゃんが発見してくれた。
もちろん僕はそのことを覚えていたわけじゃなく、ずっと後でおばちゃん本人から聞いたんだ。
おばちゃんは楽しそうに「フランダースの犬」になぞらえて僕に話してくれた。
僕はもちろん楽しくなかったけどね。

倒れたその後の数日間は思い出したくないな、あまり。
熱が出て寝込んでどうしろうもなく苦しんだんだ。

意識があるときは始終咳が止まらなかった。

僕がこのことを書きたくない一番でっかい理由はあまりにも惨めだからだ。そのときの自分がね。
実際目が覚めるたびに惨めな気分になっていた。

傍目から見ても凄いうなされ方をしてたらしいんだけど、このあたりの記憶は自分では曖昧なんだよね。
昼なのか夜なのか何時間たったのかそれとも何日もたってしまったのかさっぱり分からないし、そんなことどうでもいいくらい咳が出たんだ。

それでも比較的症状が穏やかになってくると、僕は天井の木目を眺めながらいろんなあらゆることを考えた。
実にあらゆることなんだ。病人は暇だからね。
特に僕は病人としては優等生に値するくらい真面目におとなしくしてたから恐ろしく暇なんだよね。
でも暇なのが嫌なんじゃないよ。
僕はその気になればなんだっておもしろいことを編み出すことが可能なんだ。
寝ながら、しかも天井を眺めながらね。

しかし、覚醒しながら布団の中に居るのは、まるで木の枝にずっと坐っているようなものだよね。
あるいはいつ来るか分からない誰かをずっと待っているようなものだ。

僕は待っている間に、その誰かがいつか必ず来るものと信じていなければならない。ずっとね。

僕にとって信じることは実は簡単なことだったんだ。
ただ信じ続けることってのはとてつもなく難しい。

両者の違いをはっきり感じたのはもっともっと大きくなってからのことだ。

とにかく僕は布団の中で、ハービーが僕のことを心配していないことを祈った。
同時にハービーが数日間会わない間に僕のことをすっかり忘れてしまわないと信じ続けた。

あとはとにかく毎回食事に出てくるおかゆから逃れたい一心だったんだ。
僕はおかゆが苦手だったからね。その頃。

おかゆ以外にも雑炊とか炊き込みご飯とかも苦手だったんだけど、別に食べられないわけじゃないんだ。どれもね。
ただ毎日おかゆってのはうんざりだったんだよね。
君も毎日苦手なものが出てきたら逃げ出したくなるだろう?
でも子どもは逃げられないんだ。

逃げられないからわがまま言うしかないのさ。

ねえ、悪いんだけど、って僕は言った。

「おばさん、悪いんだけどね、おかゆって飽きちゃったんだ。だから普通のご飯じゃあ駄目かなあ。ほんとはね、普通のご飯も硬めに炊いたほうが好きなんだよね。今まで言わなかったけど。」

でね、硬めに炊いたほうのご飯ってのも普通のご飯ってのもだめだったけど(消化に悪いからね)、でも次の食事のとき叔母さんはうどんを茹でてくれた。
ずっとおかゆだったからとてつもなくおいしかったんだ。

僕はね、うどんは好きでも嫌いでもなかったんだ。あまりおいしいうどんを食べたことがなかったのかもしれない。それともうどんのおいしさを今まで僕は充分に理解しきれてなかったのかもしれない。
あるいは、いっそのこと僕が何もしゃべれなければいいんだよね。あるいは、たとえばさ僕が今ここに居なくて、テントの中がハービーと爺さんだけだったら、爺さんはハービーに名前を聞くだろうか。まあ聞くのだろう。そんな気がする。
それでもハービーは名前聞かれてさ、「俺はハーベストってんだ」なんて下らない台詞は吐かないって思うんだ。もっと気の利いたこというに決まってるだろ?ワンにしろガルルルにしろウウウにしろさ。
そのとき僕に足りなかったのはそういうことさ。
つまり必要なときに必要なものが無いっていうのは想像力が足りないってことなんだ。
僕はちょっと考えれば、言葉をしゃべれない人間にだってなれたはずなんだよ。

ただし、ナイフに関して言えばとても自分を抑えられなかったし、お爺さんに「これ触ってもいい?」って聞いたし実際に触った。
爺さんは僕に好きなだけナイフを触らせたし、ハービーの奴も好きなだけ水滴を撒き散らしたし、これだからテントって最高なんだよね。

僕の話はこれだけなんだ。
ただ爺さんのテントでナイフを好きなだけ触らせてもらったってことだけさ。

これで終わりなんだ。
文章作法の先生がこれで終われって言ったからね。

2.文章作法の話

大学1年のときに文章作法という講義があった。
これは演習と講義がくっついたような授業なんだ。

名前は忘れたけど素敵な教授だった。
なんたって凄い文章書くんだ。ひとつしか読んでないけど。
寺山修二の引用が入ってる文章だった気がする。
それにね、とっても人間的なんだよ。友達になれそうな感じがするんだ。

毎週講義があって学生に何か文章を書かせるんだけど、ある週にある学生が心無い文章を書いたんだ。つまりね、先生を批判するようなことを書いたわけさ。
そしたら次の週に先生が泣きそうになってるんだよ。講義どころじゃないのさ。
きっとその文章についてああでもないこうでもないって一週間考えたんだ、彼は。
つまりひとりの学生のひとつの文章に真剣に傷つくことにしたんだ。真正面からね。

そういう教授だったから友達になれそうって思ったんだ。

でもそんなことがあって、僕はその次から最後までの講義は欠席した。
だってね、もう僕には何も書くべきものが無くなったんだよ。教授にたいしてね。
もう何一つ書けなくなったんだ。

僕がこの講義を気に入った理由がもうひとつあるんだが、それは初めの授業で起こった。
「自分とは何か」っていうテーマを出されて10分くらいで全員文章を書かされたんだけど、僕の文章が真っ先に採用されたんだ。

どういうことかっていうと、この講義にはまず200人以上の学生が集まるんだ。
一番でっかい教室に入りきれないくらいにね。
文学部の講義の中で、一番人気があるんだよ、きっと。

初めての講義のときに教授が驚いたんだ。教室に入りきれないくらいのあまりに多い人数にね。それで、キャンパス内で一番でっかい教室にみんなでぞろぞろ移動したわけさ。
それでなんとか全員教室に入りきれたんだ。

それから僕らは「自分とは何か」って題で好きなように書けって言われた。
確か10分くらいで400字前後くらいの文章を書いたかな、みんな。

それを教授が集める。200人分を。
次の週の講義までに教授が全部読んで、秀作を抜粋してタイプに打って一枚のプリントを作って、次の講義のテキストにするんだ。
ものすごく大変な作業なんだよ。誰も教授を批判するべきじゃないんだ、ほんとに。

それで、次の週になって配られたプリントを見てみると僕の書いた文章がそこにあったんだ。うれしいよね。
それで僕の書いた文章で講義が進むわけなんだ。200人のね。

良かったらそのとき僕が書いた文を読んでみてほしい。

『自分とは何か』

自分について語るというのは、自分にとって身を削るという意味では、非常に辛いところである。

これが自己紹介のように誰か相手が明確に居て、目的があって語り掛けるという場合には、その目的に即した都合の良い点を答えたり、または、自分を装ってみたりということが出来るのであるが、
または全く自分自身のために文章を書く、自分を見なおし、見つめるための文章であれば、それが日記のようなものであれば、内面を掘り下げていくのに身を削る思いなどしないはずである。

しかし、全く書けないわけではなく、別に「正直な自分」「自分に正直に書く」必要はないわけで、創作であれば、どんな風にでも書くことはできる。

それを「正直」と偽らない限り、騙すことにはならないわけであるし、全くの創作に対しても、読み手に自分が伝わることがある。

読み手の「あなたは何者か?」という姿勢が必要とされるが、たとえば、小説を読んで小説家を知るということがある。

もしかすると、小説にこそ、小説家の本当の姿、内面が読み取れるのかもしれない、と私は考えている。
よって、「私は何者か?」についての命題には正直に作り話を始めたいと思う。

私は木の上にずっと坐っていたのだが、別に木ではないし、木になろうとしてもなかなかなれなかったものである。
木そのものでないというのは非常に辛いもので、いつもいつも木の枝に(坐っている木の枝に)自分が負担をかけているように思っていたのだが、そうかといって、自分から動こうとも自分が木の上に立ったら、枝が折れてしまうんじゃないかと考え、自分が飛び降りたら、今度は自分が折れてしまうんじゃないかと考え、なかなか動けないで、始終同じことを考えていたように思う。
始めは木のことを考え、地面のことを考え、空のことを考え、結局自分のことを考えた。
あるとき、夜の女王がふとしたひょうしに息を吹きかけると私はこのキャンパスに居ることに気づいた。以上です。

この文章をみんなの前で読まれたとき僕は真っ赤になっていたんだ。
文章ってのはみんなの前で読むものじゃないよね。
少なくとも僕の書いたものはみんなの前で読むようなものじゃないんだ。

たとえば宮沢賢治がみんなの前で『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』を読まれたらきっと同じように真っ赤になったはずだよ。僕はこの話が好きだけど、ちゃんとひとりでこっそり読んでるんだ。
でも、宮沢賢治ってみんなの前で読んでも大丈夫な奴も一杯書いて持ってるんだ。『注文の多い料理店』とか『やまなし』とかさ。ずるいよね。そういうところがさ。

それで、教授は僕の文章について一言だけ褒めてくれた。なんていってたかは内緒だけどね。
そのあと、みんなにも分かるように僕の文章を噛み砕いて説明したんだ。
なんせ僕の文章ときたら分かりにくくて有名だからさ。まず誤字が多いんだ。
塾で国語を教えてたくせにね。

それから、木の上に坐っていた話について「禅のよーな話だ」って言ったんだ。(これ教授の感想だよね。)
そして「これだけでも良かったんだけどね」って言った。
つまり、禅のよーな話の部分だけでも良かったんだけどね。って意味なんだよ。
前半はいらないっていうんだ。

いいかい?「自分とは何か」ってテーマを出されて僕が身を削る思いをした、って部分はいらないっていうんだ。
うん、そのときはなるほどって思ったんだけどね。いらないかもって。

たとえばさ、『スラムダンク』って漫画あるじゃない。
ある試合中ゴリが不調のとき、ボス猿がいきなりコートに来て大根と包丁を取り出してカツラ剥きをやり始める。
そこでなんの説明もしないんだ、彼は。
漫画的には仙道なんかがカツラ剥きの意味を説明してるけどね。
本人はなんにもいわないんだよ。全くね。

つまりね、「…
で、そのときおかしなことが起こった。僕とハービーがイモを食ってるときにさ。
雨が降ってきたんだ。
最初は晴れてたんだと思うんだ、家出るときはね。だってすごうく寒かったし。

あのね、冬はね、晴れてる日の朝のほうが冷え込むんだ。曇ったり雨降ったりしたときよりも。そうじゃないかい?
でもとにかく二人と一匹でホカホカのイモ食ってる間に雨が凄い勢いで落ちてきたんだから、それは確かに覚えているんだから、それだけは確かなんだ。実際に濡れたしね。

急いでニレの木の下に避難した。
僕は持てるだけイモを持っていったな。
ハービーは雨なんかお構いなしって顔してたけど、リードを引っ張ればちゃんとついてくるんだ。
頭いいよな、ほんと。

爺さんと僕とハービーはだんだん濡れて黒くなっていく公園の地面をしばらく眺めていた。
その光景は今でもはっきり覚えているよ。土の上に雨の落ちた点がどんどん多くなっていくのを見てるのって結構好きなんだ。全然退屈しないのさ。
それに、雨はすぐやむと思ったんだ。特に理由はないけど。

けれども雨は止まないし、だんだんニレの木の下も怪しくなってきた。
葉っぱからポタポタと垂れてきたんだ、雨の溜まったのが。

冬の雨って冷たいよね。冷たいで済めばいいんだろうけど、恐ろしいよ。生死に関わる冷たさなんだ。
心底不安になるんだよね。もしひとりぼっちだったらたぶん叫びだしてただろうな。

そのとき、ハーベストは傍らに居たんだけど、気がつくとあのお爺さんがどっかに行っちゃってた。
こういうのって本当に心臓に悪いんだ。雨が冷たすぎるときに、誰かに置いてかれるのってね。
ハービーが居なかったら確実に叫びだしてたさ。
実際はハービーが隣に居ても泣きそうだったんだけどね。

実はね、僕は爺さんとしゃべったりしたことなかったんだ、今まで。
というよりちょっと怖かったんだ。僕もちっちゃかったからね。
それより何より、従兄弟の叔母さんに言われていたしね。しゃべっちゃだめだって。
あの人に近づいてはだめ、って言ったんだ。叔母さんが。
今でもその言葉は覚えてる。

でもさ、冷たい雨の塊が氷の針みたいにそこかしこから攻めてきたら君だってそんなこと忘れちまうはずだよね。特に叔母さんの忠告とかをね。

とにかく、お爺さんが居なくなって僕は不安になってしまった。
僕はだめなんだ、こういうのが。
それでリードをぎゅっと握っているんだ。この世で唯一のリードだからね。僕にとって唯一のリードなんだ。
それから、
ハーベストは頭がいいんだ。
って思った。
ハーベストは頭がいい。
それだけ心の中で繰り返していた。僕はそれこそばかのひとつ覚えみたいに
ハーベストは頭がいい、
って呪文のように繰り返し繰り返し唱えていたんだ。

分かるかい?ハーベストは頭がいいし、誰がなんと言おうと僕と一番仲がいいんだよ。
他のどの家族よりもね。
だから、雨がしばらく止まなくたって大丈夫なんだ。

あのね、お爺さんは消えちゃったわけじゃなかった。
僕は消えちゃったって思ってたんだけどね。なんの疑いもなく。
なんというか、ほら、大人ってときどき消えちゃうじゃない?
大人が消えちゃって周りには子供ばかり居て、それでいつのまにか大人と呼べるものは笛吹き男だけになっちゃうんだよね。

笛吹き男が子どもたちを連れていくので。
それで街に子どもが居なくなって大人たちが慌てる。
慌てて子どもたちを捜す。
子どもたちはどこにも居ない。
だからね、知らない人としゃべっちゃだめなんだよ。
公園のお爺さんにも近づいちゃだめなんだよ。
と、従兄弟の叔母さんが僕に言ったんだ。

ところで、お爺さんはちゃんと公園に居て、テントの中から僕とハービーを手招きで呼んでいた。
それがテントだってすぐには分からなかったんだけどね。そこに行ってみるまで。

うまく葉っぱや枝で隠されていたからね。
公園にはニレの木の他にもいろいろあるんだ。砂場だとかアスレチックジムだとか池だとか植え込みだとかね。

それで植え込みの中にお爺さんのテントがあったんだ。
お爺さんはそりゃなんだって作っちゃうんだ。自分ひとりでさ。

それに僕ときたら、そのとき秘密基地がほしくてたまらなかったんだよね。
自分だけの秘密基地を河原で作ろうとして失敗してたんだ。夏に。
だってさ、川って雨が続くと増水するんだ。
それで何もかも流されちゃったけどね。
悔しいというより、恐ろしかったな。やっぱり。
ほら君も川が怖いっていってたよね。

まあそんなんだったから、そのテントを見てすぐにお爺さんに感銘を受けたってことだ。
しかもテントには何でもあったんだ。何でもさ!

誓ってもいいけど僕はお爺さんから何か拝借したりはしてないよ?
でも、あるいはそんな気を起こさせるくらいのものは充分に揃っていたんだ。
たとえばナイフとかね。

ハービーはテントの入り口まで来てぶるぶるっっと体を震わせていたから、水滴がどうしようもなくその辺に散らばっちゃったんだけど、爺さんは何も言わなかった。僕の意識はナイフに釘付けだったし、シートの上が水浸しになったのがハービーの仕業だってことはもっと後で気づいたんだ。

ハービーにシャワーを浴びせる役目はいつも従兄弟だったんだ。従兄弟がハービーにシャンプーもするしブラッシングもするんだ。
でも風呂場から上がったあと、従兄弟はそのまま野放しにするからハービーはあちこち水浸しにしちゃうんだよ。ソファーとかね。
で、叔母さんがカンカンに怒るわけだ。まあ怒っても従兄弟は気にしないんだけどさ。
だからいつのまにかハービーをシャワーに入れる役目は僕になったし、ちゃんとドライヤーまでかけてやるんだ。

テントの中には何でもあるんだって言ったけど、ドライヤーはないんだ。だからハービーの毛を乾かすことはできなかったんだよ。
もともと乾かす必要はなかったんだけどね。
なぜならここにはカンカンに怒る叔母さんは居ないし、ソファーも無いからさ。
ドライヤーはきっと必要ないんだ。
でもナイフはとっても必要なんだよね。
ナイフさえあれば、僕はお爺さんほどまでとはいかないかもしれないけど、もっとちゃんとした秘密基地を作ることができたんだと思う。
ナイフさえ手に入ればね。

でもナイフってのは子どもにとってなかなか手に入るものじゃないんだ。
スタンドバイミーだと、ピストルまで簡単に手にはいるのにさ。ちょっとずるいだろ?
スティーブンキングにかかれば何だって手に入るんだ。必要なときに必要なものがね。
僕がスタンドバイミーの中で実際に真似できたのは線路の上を歩くことくらいさ。

OK、つまりハービーは体の水滴をまき散らすのに夢中だったし、僕はナイフに見とれていたさ。
そんとき爺さんは僕に名前を聞いたんだ。ハービーのね。
つまりね、「その犬はなんていう名前なんだ?」って聞いたわけだ。
それでさ、その後どうなったかは君にも想像できるだろうよ。
僕が「ハーベスト(っていう名前なんだ)」って答えて、爺さんが「ハーベスト(!)」ってハーベストを呼んで、だけどハーベストは振り向きもしないわけさ。家族の誰もハーベストなんて呼び方してないからね。

だから僕はこれこれこういう会話を交わしたなんていうことを事細かに書くなんて嫌なんだ。
爺さんに、犬の名前なんて聞かないでくれ、なんて言うのもナンセンスだし、とにかく、僕が犬の名前を聞かれて幻滅したのはそういうわけなんだよ。会話なんてのはトルストイにでも任せとけばいいのさ。

あるい…
いいかい?よく聞いてくれ。
僕には書きたいことがある。
とっても書きたいことがあるんだ。
これをぜひ君によんでほしい。
僕の大好きな君にぜひ読んで欲しいんだ。
ただ読むだけで良いんだ。
ただ、読んで、読み終わって、
それから好きなだけ紅茶を飲むとか、犬と散歩に行くとかしてくれればいい。
そう、犬の散歩の話なんだ。

11月のある晴れた朝を思い出して欲しい。

こういう書き出しだとまるでカポーティーみたいだが、カポーティーならカポーティーでいいさ。
僕はカポーティーが好きだし、小説はすでにそこにあるものだろ?
なにも僕が何か書かなくっても、この世界には既に小説があるんだ。
それを読めばいい。保坂和志って小説家もそう言っている。

でも僕にはとても書きたいことがあるんだよ。
これは君に読んで欲しいし、何より僕が書いたものは僕そのものなんだ。

とにかく、11月のある晴れた朝を思い浮かべてほしい。
そのとき僕が飼っていた犬はハーベストっていうんだ。

そういえば君はウナギという犬を飼っていたね。
ウナギ!って呼ぶとまっすぐ駆けてきたよね。
一週間くらいウナギに会わなかったらとっても大きくなっていてびっくりしたことを今でも覚えているよ。

ハーベストはもともと大きい犬なんだ。
ポインターだからね。猟犬なんだ。
でもそこで誰かがハーベスト!って呼んでも駆けてはこないのさ。残念だけど。
いやね、別に頭が悪いわけじゃないんだ。
ただ、家族がハーベストを呼ぶとき、てんでバラバラなんだよ、呼び方が。
つまりね、僕なんか「ハービー」って呼んでたし、叔父さんは「おい」だし、従兄弟なんか指笛で呼ぶんだぜ?
なんでいきなり従兄弟が出てくるかっていうと、そう、そのとき僕は従兄弟のうちに居候だったんだよね。叔父さんってのは従兄弟のお父さんなんだけど、あまりしゃべったことなかったな。ちょっと怖かったんだよね、子どもながらに。だってそのとき僕ときたら、まだどうしようもないくらいちっこかったからね。

どうしようもないくらいちっこかったなんて書くとまるでサリンジャーみたいだというかもしれないけど、しょうがない、別に大げさに書いてるわけじゃないんだ。ただね、去年村上春樹って小説家がサリンジャーの翻訳本を出したんだ。きっとそういう影響ってあるんだよ、よくわからないけど。

とにかく。
とにかくハーベストと僕はどうしようもなく寒い中凍えながら公園まで行ったのさ。
朝だからね。コートは着てなかったけど、手袋とマフラーはしてたな。
ハービーの奴は別に寒そうじゃなかった。
走ってたしね。僕も走ってたけど、それはもう、油断すると足が攣りそうなくらい寒いんだからどうしようもないさ。

でもハービーとの散歩は最高だね。たとえレイモンドカーバーのサインと引き合いに出されたって、僕はハービーとの散歩を取るね。とにかく最高なんだ。
そりゃカーバーの本にカーバーのサインがあって、それを手に持ってるなんてどんなに素敵なことだろうって思うよ。僕は彼の本が好きだしね。
とにかく、ハービーと散歩するのは、そんじょそこらのなんやかやがいっぺんにふってきても足りないくらい素敵なんだ。

その日もね、最高に素敵なことがあったのさ。
まあ落ち着いて聞いてくれよ。

まず、教室二つ分くらいの小さな公園なんだ、そこは。
セントラルパークの5億分の1くらいかな。
もちろん、セントラルパークの正確な大きさなんて知らないし、ここだけの話、セントラルパークなんて行ったこともないんだ、実は。更にいうとアメリカにも行ったことがないんだ。
これは結構なコンプレックスなんだよね、アメリカに行ったことがないってことが。
だって僕はアメリカって大好きだからね。

ところでフランツカフカって実際にアメリカに行ったことがあるのだろうか。もし君が知っていたらぜひ教えてほしいな。

とにかくさ、僕とハーベストはその小さな公園に毎日行っていたんだ。

公園にはニレの木がある。
誰かがニレの木だって教えてくれたんだよ、昔。だからたぶんニレの木なんだ。
たとえそれが本当は間違いだったとしても、僕にとってはこれから先もあれはニレの木ってことなんだよ。

ニレの木の下にベンチがあって、そこにその日、おじいさんが座っていた。
だいたいじいさんってのはとんでもなく早起きなんだから、朝から寒い公園に座ってたって不思議じゃないんだ。
でもね、ハーベストは立ち止まってじっと見ていたのさ、じいさんを。
だから僕も同じように突っ立ってじいさんを見ていた。

じいさんは蒸かしたジャガイモを食ってた。
そのときハーベストが考えていることはよおく分かるんだ。こいつはなんたって犬だからね。
僕がうまそうなジャガイモ!って思う以上に、うまそうなジャガイモ!って思っていることは確かなんだ。犬だからね。
ああ、犬は僕らより目が悪いし、あれがジャガイモだって分からなかったかもしれないし、まあ正確にはうまそうな食べ物!って思ったんだろうけど、でもね、目は悪いかもしれないけど頭はそんなに悪くないんだ。それは前にも言ったよね。

だから僕の手からリードを振り切って一目散にじいさんのところに突進するなんてことはしないわけさ。ちゃんとしつけられているんだ。
じいさんは僕らに対して手招きしようとしたと思うんだが、たぶんそれはあまり良い考えじゃないと思ってやめたんだと思う。なぜって、ハーベストときたら当時の僕とほとんどかわらない背丈なんだ。
犬の場合も背丈っていうのかどうかは知らないけど、とにかくハービーと僕は頭の位置がほぼ一緒ってことさ。
つまりね、そんなちっちゃな奴がそんなでっかい犬を連れてるなんてどう見ても不自然なんだよね。
じいさんにはハービーがどこまで頭のいい奴かなんて、ちょっと見ただけじゃわかんないさ、もちろん。

だけど、僕らを手招きする代わりに爺さんは公園の中央の落ち葉の塊を指さした。
顔は笑ってなかったけど、どちらかというと好意的なしぐさに見えたね、僕には。
ほら、顔中髭だらけのじいさんってあんまり表情変えないんだ。笑うときは豪快だけどさ。

とにかく落ち葉の塊ってのは焚き火の跡だった。
もっというと、その落ち葉ってのは爺さんが掃き集めた落ち葉なのさ。
なんで知ってるかっていうと、もちろん僕もハーベストも毎朝のように来てるからね。
ここには。

暑い日も今日みたいに凍える日も、おじいさんがほうきで掃いたりゴミ拾ったりしてるわけさ。
だから、この公園はあのじいさんのものなんだ。誰がなんと言おうとね。

ハーベストは焚き火の跡から真っ先にジャガイモを掘りだした。
そんで僕もあとから全部掘り出した。ジャガイモのほかにサツマイモもあったな。
ジャガイモはホイルの中にくるんであってバターがひとかえけら入っているからバター焼きになっているんだ、ちゃんと。
僕はそれをひとつもらった。

さっき爺さんがジャガイモの「蒸かしたの」食べてたって書いたけど、正確にはバター焼きなんだね。
いや、正確にはバター焼きと言わないかもしれない。君がもし正確な料理名を知っていたらぜひ教えてほしいな。
で、ハービーはホイルを器用に破ってわき目もふらずに食ってたんだ。これを従兄弟の家族が見たら僕はすごおく怒られるんだろうけどね。
なぜって、ハービーは僕の犬だって前に書いたけど本当の本当は従兄弟の家族の犬なんだよ。だから勝手にモノを食べさせたら叱られるわけさ。でもね、ハービーと僕は一番仲がいいんだ。誰がなんといおうとね。

で、そのときおかしなことが起こっ…

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